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思いきって少しだけ目をあけると、彼は今まで見たことないくらいに、幸せそうだった。
「ルル…ありがとう」
そう言ってほほえむ彼の瞳が、どことなく寂しそうに見えたのは気のせい…?
「じゃあ、ルル。そろそろ時間だ。また明日…な」
キヤは毎日午後7時に来て、午後8時に帰ってしまう。
たった1時間。
キヤといると楽しいから、時間はイジワルをしてトキを早く進める。
ワガママ言って彼を困らせたいワケじゃないのに
どうしても行ってほしくなくて、
「行かないで…」
と言ってしまう。
「ごめんな、ルル」
キヤはそう言って、私のほほに手をそえると、行ってしまった。
私は、泣きたくなるのをこらえて、鏡の前で笑顔をつくった。
「笑顔…笑顔!!暗い顔してると、キヤに嫌われちゃう…!」
この頃の私は、キヤのコトしか頭になくて、他のこと、ましては外の人間達になんて興味がなかった。
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