第1章

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――太平洋上空の電子数が増加中 地震の前兆現象の可能性あり! ――やばい 地震 くるかも ――場所は? ――日本 青森県 東方沖 「青森県……」 僕は流すようにスクロールしていた指を止めた。画面を戻し、もう一度読み返す。僕が住んでいるのは青森県なのだ。 ――震度は? ――それは分からない けど たぶん一時間後くらいにくる けっこう大きそう DONETに詳しい人 あとよろしく 電子数だとか、DONETというのが何のことなのかはよく分からなかった。 僕は算数のテキストを閉じた。 画面の一番上に表示された信用度は60%となっている。低くはない数値だ。 僕は立ち上がり、部屋を出た。 「ママ! 地震が来るかもしれない」 階段の上から、一階にいる母親に声をかけた。 「え? 何言ってるの?」 一階で昼食の後片付けをしているらしい母が、呑気な声をあげた。 「避難するから準備して!」 「馬鹿なこと言わないで、洗い物がまだ残ってるし、買い物にも行かないといけないのよ」 いつものように、母は僕の話を信じていなかった。 これだから大人は嫌なのだ。
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