第1章

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――近隣のみなさま! 地震の予報が出ています 情報ソースは信頼できます 早急に避難して下さい 避難場所は 東通村体育館です 「あ、小学校じゃないみたいだ」 画面には近隣の住人の掲示板が表示されている。近くにある体育館が避難場所として表示されていた。 「ママ、避難場所は体育館だって、真夏と一緒に避難するから、ママも早く来るんだよ」 「はーい。後でね」 呑気な母の返事を聞きながら、避難袋を持ち上げる。思ったよりも重たかったが、僕でも何とか持てそうだった。 「パパに連絡しといた」 靴を履き終えた真夏が不安な顔でこちらを見上げていた。妹は母と違って気転が利く。 「パパは何て?」 「仕事だから無理だって」 「これだから大人は……」 僕はため息をつきながら靴を履いた。もう一度キッチンにいる母に声をかける 「ママ、たぶん一時間以内に地震が来るから、早く来てよ!」 「はーい。いってらっしゃい! 気をつけてね」 「ママは来ないの?」 真夏が悲しそうにキッチンを見ていた。 「後から来るだろう」 掲示板は次々と更新されていく。
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