御守り

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 彼女と出会ってからひと月が経った頃だ。  五月の末には体育祭が催される。  その頃になってもまだ、彼女はクラスに打ち解けていないようだった。  部活にも入っていなかったら、余計に誰かと話す機会を失っているらしかった。  虐められていただとか、疎外されていたというわけではない。  話しかけられれば返答もするが、どうも率先して他人と関わるのを避けていた。  いや、恐れていたと言う方が正しいだろう。  会話に花を咲かせる女子の一団に声をかけようとするものの、足踏みして終わる場面に何度か遭遇した。  体育祭の出場種目を決定する際も、立候補を躊躇っている間に長距離走の選手に登録されてしまった。  肩を落としながら行く帰り道、彼女の背中はとても小さく見えた。  ポケットを握る力も弱い。
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