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車に乗ると、
「久しぶりだからちょっと緊張しちゃうね」
「えっ、長野くんも緊張するの?」
「するよ~」
「そっか、私だけじゃないんだ」
(なんかうれしいな)
「何食べる?」
「そうだなぁ…」
その時着信音が鳴った。
長野くんのだった。
「ごめん。ちょっと…」
そう言って、電話にでた。
「はい……えっ、そうなんですか。……わかりました」
電話を切った長野くんはうなだれた。
「長野くん、どうしたの?」
「さちちゃん、ごめん。…急に仕事になった」
「そっか、じゃあ行ってきて」
私は寂しかったが、その気持ちを隠すように笑った。
すると、長野くんは切ない顔をして言った。
「ほんとごめん。やっと会えたのに」
「ううん、長野くん。あのね、長野くんの笑顔や歌に元気をもらってる人、たくさんいるんだよ。私もそのうちの一人…だから、がんばって、応援してるから」
「さちちゃん…」
(そうだよ、行かないでなんて言えない…私だけ独り占めできないよ…)
「じゃあがんばってくるよ」
「うん、私はここで降りるから、気をつけてね」
「いや、駅まで送る」
「遅れちゃうよ、大丈夫だから、ねっ」
「ほんとにごめん。埋め合わせはちゃんとするから」
そして、長野くんは仕事に向かった。
私は、長野くんの車が見えなくなるまでその場に立っていた。
そして、コンビニで適当にお弁当を買い、家に帰った。
テレビをつけ、お弁当を食べた。
でも、長野くんとご飯食べた時のことを考えているとおいしくなかった。
(ほんとは今頃楽しく長野くんとご飯食べていたはずなんだよね…
こんなに寂しかったんだ…)
何気なく見ていたテレビに長野くんが映った。
長野くんは、いつもの笑顔で話していた。
(さっきまで一緒にいたんだよね…
やっぱり私には遠い人なんだよね…
私……忘れてた。何、勘違いしてるんだろう…)
私は見ていられなくなってテレビを消し、ベットに横になった。
改めて、違う世界にいることに気づかされた。
(私は、ファンなんだから……)
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