Vol.36 ベクトルの向かう先

ベクトルの向かう先

「美智には札幌で１人暮らしをする事にすら難色を示したのに、私には何も言ってくれなかった。

私は進学先を地元から近い旭川に決めて、一人暮らしをしたいだなんてワガママも言ったのに。

お父さんもお母さんも、全部私の言うとおりにしてくれて・・・。

それなのにどうして今更、私の事を止めようとするの!?」

同じ家で育った姉妹なのに。

そうしてこんなに待遇が違うのか。

特急電車で30分の街に進学を決めた私。

一人暮らしを経験したいという私のワガママは簡単に受け入れられたはずだった。

だけど妹の美智は東京はおろか札幌に進学する事さえも初めは反対され、長い説得の末ようやく一人暮らしをして札幌の服飾専門学校に通う事が許されたのだ。