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【時狂人の視点】
俺は治療に専念していた開かずの間から別の開かずの間へと強制的に移され、暗闇の中で百過刀を収めた鞘を抱く。
前の戦いで負った傷は治りきっていない。
その暗闇に総一郎の声が響く。
「すまない。仕事だ」
「半病人の俺にか?両角鬼やウツロ姫はどうした?」
「両角鬼は千年の因縁に決着をつけ、死んだ」
「あいつが?」
死とは無縁に思えた鬼だった。
「……そうか」
「虚姫の方は僕の制御が及ばない。どこにいるかも分からない」
「散々だな。で、誰を殺れと?」
「二面神ヤーヌスと冥王」
「強いのか?」
「強い。本来なら鬼の軍を編成し、総力をもって仕留めにかかる相手だ」
「ならば、さっさと組織し、俺につけろ」
「それは不可能だ。理想郷結界の中だからな。鬼は活動出来ない。それ故に、お前に頼んでいる。お前は人間だ。結界内でも活動出来る」
「話を聞く限り、人間が敵う相手ではなさそうだが?」
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