第60話 千年の宿怨

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眼光は血抜きの溝に添って遡り、もう一つの眼光がその後に続く。 頬から溢れる血は風を受け、頬骨を越えてうなじへと真横に流れる。 薙刀の利点はそのリーチだが、巨大な鬼に対しては懐に飛び込まなければならない。 そして、血の流れがこめかみに向け顔面を遡る。 薙刀を振り下ろした俺の右肩は、泥に踏み込んだ左足を越えてさらに左へ、そして、膝より下に位置する。 胴を極限までひねった、斜め一閃。 そこから垂直に右肩を跳ね上げ、頬の血は上から下へと真逆に流れる。 斬り上げた一閃。 さらに手首を反し、胴のひねりを戻す動作で水平に振り抜く。 横一閃。 足元ではブーツの踵が泥に三つの穴を穿ち、ステップによる回転が敵に再び刃を見舞う。 計四閃。 瞬きする間に放たれた四度の攻撃。 それらは全て阻まれ、浅い掻き傷を残した大剣が唸りを上げる。
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