第60話 千年の宿怨

13/72
前へ
/123ページ
次へ
振り抜かれた大剣が薙刀を歪ませ、俺は吹き飛ばされる。 おそらく、まともに大剣の衝撃を受けとめれば俺の体が壊れる、真紀はそう判断し、裾から足を退かしたのだ。 だが、緩和されたとしても、両角鬼の力は凄まじかった。 俺の体は上下を入れ替えてゴム毬のように腐泥門の跳ね、その脇を一陣の風となった裾踏姫が並走する。 視界が逆転し、体が浮いた瞬間、その体の下に真紀が走りながら不自然な格好で足を突き入れる。 そこに在るのはコートの長い裾。 俺の体は慣性を無視して地に留められ、留めた方の真紀は己の慣性を殺しきれずに地を転がる。 すぐさま立ち上がった真紀の真後ろには理想郷結界の壁。 あのまま吹き飛ばされていれば、俺の体は今ごろ結界内にあったはずだ。 真紀はあくまで俺を結界内に入れたくないらしい。 真紀の髪型は動きやすさを重視したものであるが、地を転がった後では流石に顔に掛かり、塵に汚れた髪の間から瞳が覗く。
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5337人が本棚に入れています
本棚に追加