第60話 千年の宿怨

14/72
前へ
/123ページ
次へ
双眸に宿るのは強烈で冷やかな意志の光。 その瞳が、前に進めと俺を駆り立てる。 視線を移せば、両角鬼が構えた剣の角度を変え、向かって来いよと俺を急き立てる。 前門の虎・後門の狼というやつだ。 (ちくしょう……) 今は手にした薙刀の柄の確かな感触だけが心強く、俺は己を奮い立たせる。 ただし、拠り所とした唯一の武器も俺の味方ではない。 俺の足下にパクリと口を開け、贄が沈むのを今か今かと待っているのだ。 (どいつもこいつも……俺に消えろってか?) 俺は渇いた口内をグルリと舌で舐め、攻撃に備えて重心を移動させた。
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5337人が本棚に入れています
本棚に追加