第60話 千年の宿怨

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【石倉真紀の視点】 先程の四連の攻撃といい、スピード、力ともにカズマの動きはベストに近い。 だが、敵は揺るがない。 極めて不利だ。 (だけど……) 私は顔に掛かった髪を手で払い除ける。 理想郷結界へ退くわけにはいかない。 目の前のコートに包まれた肩は激しく上下している。 疲労とダメージが蓄積しているのが分かる。 (カズマ……) 彼に恋をしていないと言えば嘘になる。 しかし、その恋のために退いたのでは、彼と出会った意味が無くなる。 私の目的は裾踏姫による軍団を作り上げることだ。開かずの間に負けぬ力を生み出すこと。 そのためならば、同属である姫達に蔑まされ、爪弾きにされても構わない。 全て承知で始めたことだ。 戦うことを知らぬ姫達に、戦えることを教えなければならない。 いずれ出現するはずの軍団、その先駆者に私がなるのだ。 よって、前に立つ男に期待することは一つ。 軍団を率いろとは言わない。半ばで果てることがあってもよい。ただ、先駆者であって欲しい。 文字通り、先を駆ける者であって欲しい。
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