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先駆者が限界を設ければ、後に続く者はそこで止まる。先駆者は己に限界を設けてはならないのだ。
カズマにとって、目の前の鬼が限界であってはならない。
また、恋するゆえに、妥協してはならない。
それが私に限界を設けさせるのならば、恋など捨てる。
今までそうして来たように。
(例え……ここで果てたとしても……)
私達が限界に挑んだことは姫達に記憶される。
それが先駆者の姿勢だ。
私はブーツの裏でアスファルトを擦り、重心を落とす。
舞踏の構え。
私はふと唇に笑みを浮かべる。
銭湯での石鹸を利用した特訓が思い返されたのだ。
(何だか……懐かしい)
後続は確実に育っている。
少し難はあるが、夏奈子は驚異的なスピードで舞踏をマスターした。
足元に青い裾がある限り、彼女は戦い続けるだろう。
浴衣の主のために。
(望月拓郎……か)
私は唇から笑みを消す。
抜けている所はあるが、切れ者には違いない。
今のところ、私の秘密に気付いているのは彼だけだ。
彼は気付き、それでもなお、なに食わぬ顔で私に接している。
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