第60話 千年の宿怨

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それを見極め、私は足を繰り出す。 カズマの細かなステップに対しては、私は爪先と踵を入れ替える最小の動作でもって応じる。 横移動に対しては、私は足で地を薙ぎ、軸足を入れ替え、体全体を回転させる思いきった動作で対応する。 腕はバランスを保つために大きく振り、微調整として肘を様々な角度に曲げ、さらなる微調整として指の曲げ伸ばしを加える。 汗を吸った髪は重さを増し、遠心力によって振られ、乱舞する。 連続する金属音と火花。 カズマは薙刀を半転させる度に持ち手を変え、薙刀は様々に軌道を変えつつ速度を増していく。 切っ先の残光はカズマの周囲に円を描き、スピードが増すとともに輪は範囲を拡大させていく。 それは確実に裾の端にまで達し、刃は私をも襲う。 私は時に背を反らして鼻先にかわし、時に屈んで頭上にやり過ごす。 それでも時折、切っ先は宙に赤い筋を引く。 爪先から指先まで、隅々にまで神経を行き渡らせ、私は命をつないでいく。 カズマの速度に私が応え、私の速度にカズマがさらなる速度をもって応え、敵に刃を叩き込む。 相乗的に増すスピード。 男女が命を削り合う死のワルツ。
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