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「自惚れるつもりはねえ。始祖姫以来の禁忌を破り、お前が始めた戦いは、俺を殺すためだけの戦いだったとは言わねえ。だがな、だとしたら、この千年、遊んでいたわけではあるまい。探しだしたのかよ?俺を殺し、お前の目的を遂げるための男は」
鬼と真紀の間にあって、俺は言葉を遮るため、宙に向けて薙刀を一閃する。
「もういい、止めろ。てめえの妄想は聞き飽きた。やる気が無いのなら失せろ」
目の前にいる鬼は決して俺の勝てる相手ではない。
緊張があるのは当然だ。しかし、恐れはない。
理由は、出てきたばかりの、すぐ後ろにある理想郷結界の壁だ。
あらゆる災厄を排除する結界。鬼に対しては無敵の盾となる。
さらに、真紀は先の戦いにより、周囲にあるもの全てを把握、利用することによって、戦況を有利にする能力を体得している。
真紀が結界を活かして戦えば、例え勝てなくとも、負けることはない。
両角鬼と戦うにあたって、ここには最良の環境が整っていた。
でなければ、俺はこうまで平然としていられなかっただろう。
(好機だ)
俺は柄を握る指に力を込める。
真紀ならば、言わずとも俺の考えが分かるはずだ。
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