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「いいなー、ドレス……」
私が下らないことを考えている最中、傍らでリンは呟く。
「やっぱりリンもそう言うのに憧れたりしますか?」
「そりゃ私だって女の子なんだし当然憧れるよ。ユリは違うの?」
「私は……わかりません。そう言うのは考えたことないので」
気になって聞いてみたものの、返って来たリンの問いに曖昧に答えるしかできない。なにせ少し前までそういったものからは程遠い生活をしていたのだから、答えらしき答えを持ち合わせてなどいなかった。
「似合うと思うけどな」
ポツリ、そんな声を聞く。声の主は先程までクロウと話していたシン。どうやら会話が耳に入っていたようだ。
そしてそれは完全に無警戒だった私を、今まで男性にそんなことを言われたこともなかった私の顔を赤く染めるには十分な一言だった。
「ユリ、どうしたの?」
私の顔を覗き込むように真っ直ぐ見つめてきたリン。どうやらさっきの声は私にしか聞こえていなかったようで、急に顔を赤くしたことを心配されたようだ。
それに私は「何でもありません」と誤魔化す他ない。誤魔化しきれたのか、察してくれたのかはわからないがリンは引いてくれた。後で詳しく聞かれないことを祈るしかない。
「俺、そろそろ行くわ。また休み明けに」
手持ち鞄を手に、シンはいつの間にか出入り口にいてあっさりと別れを告げる。
これでは言い逃げではないか。私だけに恥ずかしい思いをさせて、これは少し卑怯だ。
しかもここで追いかけるのは余計自分を辱めるようで気が引ける。もしこれに勝ち負けがあるのなら私は完全に負けていた。

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