第三幕 神様の子供達

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私、水野理子は正直目の前の光景に驚きを隠せなかった。 怪しいと思われた一枚の大きな絵、その絵を動かすと地下へ続く階段が現れた。 勿論その光景にも驚いたが、もっと驚いたのは小原の観察眼だ。 小原幸太郎。本人の話では、わずか十六という若さで持ち前の推理力と観察眼で様々な事件を解決に導き、十八で警視総監にまで上り詰めた神と呼ばれる天才刑事らしい。 『来ないんですか、水野さん』 気づくと、小原が階段を降りようとしていた。六道もその後に続く。 『・・・行くわ』 正直、こんな怪しげな階段を進もうという気は起こらなかった。進みたくないが、この場所を出るヒントがあるかもしれない。そう考えると結局進むしかないらしい。 『痛っ!』 壁に手をついた瞬間、指先に軽い痛みが走った。よく見ると、指先を少し切ったようだ。 『大丈夫ですか?見せて下さい』 小原が心配そうな声で私の手を掴む。 『気安く触んないで、このナルシスト!』 『これは失礼・・・』 何が可笑しいのか、小原は笑みを浮かべながら私を見ている。 『痛っ!』 六道が後ろの方で声を上げた。 『大丈夫ですか、六道さん?』 『ええ。少し指を切ったみたいだけど、大丈夫』 『・・・とにかく、暗いから気をつけて降りましょう』 そんな事がありながらも、私達は長いようで短い階段をひたすら降り数分後、ようやく最下層にたどり着いた。 『・・・これで終わりなの?』 私は思わずそう呟いた。 『いえ、見にくいですがドアがあります。どうやらここが目的地のようですね』 目を凝らして見てみると、確かにドアがある。小原は何のためらいもなくドアを開けた。 ドアが開き中に入ると、そこは六畳もなさそうな小さな部屋に木で出来た小さな机と椅子。その部屋を大量の本と大量の紙切れが埋め尽くしていた。 『・・・何なのここ?』 『恐らく、図書室ではないでしょうか?色んな本があるようですね・・・。医学、生物学、遺伝子に関する本のようです』 『色々と調べてみる価値がありそうですね』  小原はそう言って、周囲を見回し始めた。知らない他人と狭い空間でこうして探索するのは気に入らないが、家に帰るためと自分を納得させながら私も周囲を見回す。 『・・・?』  ふと、六道を見ると青ざめた表情を浮かべながら汗を流している。  私は変だと思いながらも気にせず探索を始めた。
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