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もう何年たつのだろうか。俺は物心ついたときには既に檻の中にいた。
何が正しくて何が間違いなのか分からない。常に恐怖に支配されていた俺に見張りの男は『100人の人間を殺せば自由にする』そう言った。
俺はその言葉を信じて、基礎体力をつける訓練、相手の動き、ナイフの使い方、俺はそれら全てをあの狭い檻の中で訓練してきた。
何度死にそうになったか分からない。だが、自由という思いを支えに今まで耐えてきた。
その経験のお陰なのか、朝木総一郎と名乗るこの男はかなり危険だと一目で分かった。スーツに身を包み、礼儀正しい姿勢とは裏腹に男からは強い殺気を感じた。
『・・・お前、一体誰なんだ?』
『さっきも言いましたが、私の名前は朝木総一郎。カンパニーの社員として働いてます』
『・・・カンパニー?』
『カンパニーというのは製薬会社の名前です。裏では兵器開発もしていますがね』
『・・・兵器?一体、何の話だ?俺を自由にする約束だろ!』
朝木と名乗るその男は一枚の写真を投げつけてきた。写真には見たことのない女の人が写っている。どういう訳か、初めて見たような気にはならなかった。
『何だこれは?』
男は返答せず無言で笑みを浮かべている。何も話さない所を見るとあたりらしい。
我慢ならなくなった俺は右手に握った血まみれのナイフを男の首元にかざす。。
『お前とのお喋りに興味は無い。死にたくなかったらさっさと自由をよこせ』
俺は静かにゆっくりと語った。ナイフで脅せば早いと思ったからだ。
『・・・我々は様々な兵器を開発し、世の中に送り出してきました。ですが、どんな兵器よりも強い武器が世の中にはある。何か分かりますか?』
『・・・?』
『それは人間です。我々は究極の人間兵器を造りたいと思った。そこで、五人の人間に赤ん坊を売ってもらったのです。』
『・・・売ってもらった?』
『実験には新鮮なDNAの赤ん坊が必要不可欠だった。五人とも大金を見せたら喜んで出してくれましたよ』
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