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頭を冷静に切り替え、僕は牛島のように死体をマジマジと見つめた。
テレビなどで死体を見たことはあるが、実際に見るのは初めてだ。
人形のようにピクリとも動かないが、見てみると今にも起き上がりそうな程に外傷もなく綺麗に死んでいる。
だが、こいつは一体誰なんだろうか?
『・・・死亡推定時刻は午後五時から六時の間だと思う。脈の変化と瞳孔から計算するとそんな所だろう』
『脈と瞳孔だけで計算して死亡推定時刻を割り出す、なかなか頭がいいようだな』
『・・・それで、この死体は誰の知り合いなの?』
『僕は知らない、こんな奴』
『私も見たことないな。君の知り合いでもなさそうだな?』
『・・・まあね。私、思ったんだけど普通、死体は嫌な匂いを出したりするものじゃないの?腐ったりして』
『恐らく腐敗処理が完璧に出来てるからだろう』
腐敗処理・・・。水野の言うとおり、死体なら腐臭を放つはずだが、この死体は嫌な匂いを一切放っていない。まるで、生きているかのように。
しかし、こんな完璧な腐敗処理は僕の知る限り聞いたことがない。
『・・・それで、一体誰が殺したの?』
『殺したとは決まってないだろ?自殺かもしれな』
『こんな広間の真ん中で?もしかしてあんたが殺したんじゃないの?』
『何だと?何を根拠に言っている?』
『だって、あんたこんな状況だと言うのにヤケに冷静だもの。それに、あれを死体だと判断して詳しく調べたのもあんたが最初だし。もし、誰かが殺したのならきっとあんたね。とにかく警察を呼んだ方がいいんじゃない?誰か携帯持ってない?』
『僕は持ってない』
『私は初めから携帯を持ってない。というより、今いる場所が分かってないんだから呼びようがないと思うんだが・・・』
牛島はそう言いながら正面のドアを開けようとしたが、やはりドアはピクリとも動かない。
『・・・ふむ、やっぱり開かないか』
『僕達もやってみたけど開かなかった。どうする気だ?』
『とにかく、他の出口を探して外に出よう。まずはそれからだ』
『本当に出口なんてあるの?私達、皆ここで殺されるんじゃ・・・』
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