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第五章 過去と現在
2002年 6月25日 14時00分
『起きろ・・・。目を覚ませ』
聞き慣れたいつもの声。声で俺、小原幸太郎は目を覚ました。
『・・・』
煉瓦の壁、鉄格子に覆われたいつもの部屋。腕にはめられた小さな腕輪、その部屋で見張り役のそいつは俺を見下ろしていた。
『いつまで寝ている?起きろ、おねむの時間は終わりだ坊主』
ニヤリと笑いながらそいつは言った。筋肉質のデカイ図体でニヤリと笑うこいつは気持ち悪いなと思いながら、俺はいつものように部屋を出る。
少し長い廊下を抜けると、そこはいつもの小さな部屋。俺は男に小さなナイフを渡されると、強引に部屋へ押し込められる。
『・・・』
またここか・・・。俺は心の中でそう呟いた。
狭く小さな部屋に、辺りに飛び散った血の塊。もう何年ここにいるのだろうか?物心ついた時からいる俺には分からない。
俺の目の前の壁が開かれる。中から、全身傷だらけの男が現れた。全身、血まみれだ。
『おい、お前が最後の相手か?』
『・・・』
『ガキかよ・・・。まあ、いい。お前を殺せばここから出られるんだからな!』
対峙したときの目の前の男の息づかい、目の動作、それを確認した瞬間、こいつがどう動くかを俺は感じとる。予想通り、男は手に持っているナイフを俺の心臓に向かって振り下ろす。
俺は振り上げられたナイフをかわし、手に持ったナイフで男の首元をえぐる。
『・・・!!』
男は口をパクパクと動かしながら、そのまま倒れた。青ざめた表情を浮かべながら白目を向いて、最後は動かなくなった。
『合格。これで100人達成ですね』
聞き慣れた声がどこからか聞こえる。
『・・・お前の言う通り、一年かけて目的の100人殺しを達成した。さあ、約束を果たしてもらおうか』
『・・・いいでしょう』
一体いつから居たのだろう、全身黒のスーツを着たその男は表情に笑みを浮かべながら立ち尽くしていた。
『・・・お前がここのボスか?』
『朝木総一郎と申します。以後お見知りおきを』
そう言い放つ男の顔は若々しく見えた。多分、十代だろう。
『挨拶はどうでもいい。約束を覚えているな?』
『ええ、全て話しましょう』
朝木総一郎、そう名乗った男は語りだした。俺、小原幸太郎が殺しの実技を叩き込まれた理由を。
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