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第二幕 五人の神
2015年 7月1日 15時15分
『誰だ?お前は?』
最初に口を開いたのは牛島だった。
『まあまあ、落ち着いて』
口を開いたのはスーツを着た男だった。
見た目は二十代、しっかりとした顔立ちと鋭い眼光から普通の人間ではないだろうと思った。スーツを着てはいるがとてもサラリーマンには見えない。
『またおかしなのが現れたわね・・・』
水野がポツリと呟いた。
『おかしい?聞こえたよ、そこの君。君のような美しくない顔をした人におかしいなんて言われる筋合いはないね』
『・・・美しくない?』
『そうです。美しいという言葉は私にこそ相応しい』
『・・・』
水野は真っ直ぐに男を睨みつける。どういう人物かは知らないが、どうやら残念な頭の持ち主のようだ。
『皆様、私の前で争いは止めて下さい』
無言だった女が突然口を開いた。
『神が見ています。神の前で醜い争いなど止めなさい』
胸に鳩のピンバッジを着け、シスターのような格好をした女は力強い口調でそう言った。牛島も加わり、四人の睨み合いが始まった。
でも、自分には関係ないので黙ってその光景を眺めていた。
『あんた達、一体誰なの?』
水野が二人を睨みつけながら言った。
『私の名前は小原、小原孝太郎。年は十八。職業は刑事です』
『刑事・・・だと?』
『ええ、そうですよ。牛島圭吾』
『・・・何故、名前を知っている?』
『あなた達はその筋で有名ですからね。科学者の牛島圭吾にアスリートの水野理子、数学者の神谷未来。そして、治せない病気は無く、死んだ人間も生き返らせると謳われた医学界の神、六道冥』
『・・・!』
『医者?あんた医者なのか?』
『ええ、まあ・・・』
僕がそう聞くと、女は歯切れ悪そうに口を開いた。その表情は少し青ざめているようにも見えた。
『じゃあ、刑事さん。もしかして、あんたも?』
『まあ、私の事よりまずあの死体の事を聞いていいですか?』
小原は例の死体を指差した。僕は二人に今までの経緯を説明した。
『なるほど・・・。そういうことでしたか』
『あんた刑事なんでしょ?あれ、何とかしなさいよ!』
『何とか?私一人にどうしろと?携帯もないのに』
『自殺か殺人か調べるとか出来るでしょう?』
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