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創-キズ-
アタシの中にはもう1人…彼がいる。
彼の名前はJ、アタシがそう名付けた。
Jとは、アタシが兄に虐められていた8才の頃からずっと一緒にいる。
誰よりも親い存在だ。
Jが最初に現れたのは、締め出された深夜のベランダで、今まさに飛び降りようかと地面を見つめていた時だった。
「死にたいのか?…でもムリだな、この高さじゃ死ねない」
誰だろうという疑問や恐怖心はなかった。
ただ、Jの言葉と共に脳裏に映った死に損なった自分の姿に「…じゃあ、ダメだね」と溜め息を吐いただけ。
それからは、アタシが死にたいと思い詰める度に現れるようになった。
「何も遺さずに逝くのか?どうせなら全部吐いてから逝けよ」
「遺書?…ムリだよ…書けない」
「ここからだと、第一発見者は母親になるな…当て付けか?」
「うん、後悔すればいい…アタシを産んだことを、後悔すればいい」
「姉ちゃんは?オマエを助けてあげられなかったことを後悔するんじゃないか?」
「………」
Jはこうやって、その都度アタシを踏み止まらせた。
未だにそうだ、この頃ほどではないが相変わらず死にたがりなアタシをいつも戒めてくれる。
「まーたオマエは…ろくでもねぇこと考てんじゃねーよ」と。
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