再-フタタビ-

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再-フタタビ-

兄に虐められなくなってから中学に上がるまでの間は、それなりに平穏だった。 友達もでき、ひとり思い詰めることも少なくなったからかJは偶にしか現れなくなった。 道路脇に停まっている不審車両や、不審者らしき人物、霊的に宜しくないであろう場所などで「気を付けろよ」と警告してくれるぐらいだろうか。 でも中学に上がり、ただでさえ入学、進級、卒業と毎年変わる環境と顔触れに適応できずにいたアタシは、それに加えての長女との同居やその他諸々で、また元の状態に戻ってしまった。 幼い頃にあった幻聴や幻覚(鬱の症状)に、家に居ても気が休まらないから眠れなくて、そのせいで頭痛が酷いから学校へ行っても保健室に入り浸りか休みがちになっていった。 だから再びJが現れるようになった。 でもそれは現れるというより、常に傍にいるようだった。 そう1つの肉体に意識が2つ、まるでメビウスの帯のように表裏一体で存在している感じ、交代人格はない。 ちなみに肉体の主導権はアタシにある、だからJの意識が表の場合でも動かしているのはアタシだ。 説明し難いが、Jが誰かと話しているのをアタシは内側で見聞きしているし、それに伴う動作はJの思考が流れ込んでくるから動けるという具合だ。 でも何て言うか、言葉を発しているのに口パクのような、Jの思考で動くからか半テンポほどズレる感覚はある。
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