001.星

2/8
前へ
/8ページ
次へ
夜十時を回って、人影のまばらな駅のホーム。 男は一区間分の切符を片手に、長いことそこに立っていた。 電車のドアが開くたび、人は男を横目に見ては乗り込んでいく。 乗らないのか、と言いたげに。 「乗らないの?」 不意に話しかけられた。 高校生か、それとも中学生か… 十代なかばくらいの少女。 制服は着ていない。 「あ、あぁ…」 男は、どうとでも取れる返事をした。 「ふーん」 少女はホームのベンチに座っている。 足の上に両肘を置いて、前かがみに頬杖をついている。 男は、まじまじと少女を見た。 もう少しで肩に届くくらいの、癖のないつややかな髪。 白い肌と、細く、長く、たおやかな指先。 ぱっちりと大きな両眼に、筋の通ったきれいな鼻。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加