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夜十時を回って、人影のまばらな駅のホーム。
男は一区間分の切符を片手に、長いことそこに立っていた。
電車のドアが開くたび、人は男を横目に見ては乗り込んでいく。
乗らないのか、と言いたげに。
「乗らないの?」
不意に話しかけられた。
高校生か、それとも中学生か…
十代なかばくらいの少女。
制服は着ていない。
「あ、あぁ…」
男は、どうとでも取れる返事をした。
「ふーん」
少女はホームのベンチに座っている。
足の上に両肘を置いて、前かがみに頬杖をついている。
男は、まじまじと少女を見た。
もう少しで肩に届くくらいの、癖のないつややかな髪。
白い肌と、細く、長く、たおやかな指先。
ぱっちりと大きな両眼に、筋の通ったきれいな鼻。
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