001.星

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「…あの、」 気がついたら、男は少女に声をかけていた。 「きみ、高校生? 中学生? こんな時間に、何してるの」 少女は頬杖をついたまま、男にチラッと顔を向ける。 「何もしてない」 答えた少女の声は、リンと澄んだ、それでいて可愛らしい声。 そのくせ、口調はどこかぶっきらぼう。 「か、帰らなきゃ。 家の人、心配してるよ」 少女はまた、男をチラッと見た。 「あなたは?」 聞かれて、男は返答に詰まる。 うなだれる。 汗ばんだ手のひらの中には、切符が一枚。 「この先に、家なんてない。 そんな切符で、どこ行くつもり」 切符を買うところを見られていたのだろうか。 確かに、少女の言うとおりだった。 電車が次に止まるのは、某大手工場の正門前。 そこが終着駅。 先に公園はあるが、多分、すでに閉園している。
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