001.星

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「いや、そんなことはないよ」 男は、思い違いに気がついた。 「だってさっきから、何人もの人が電車に乗ってる。 ぼくを置いて、家に帰るため」 「その人たち、生きてるのかしら」 「えっ」 男は驚いて少女を見た。 少女は体を起こして、静かな線路を見ている。 それから、すーっと視線を上げる。 遠くから電車の音が聞こえ始めた。 ドクン。 ドクン。 胸が早鐘を打ち始める。 「時刻表を、よく見てご覧」 少女の声は、最初よりはいくらか柔らかくなった。 …そんな気がしただけかもしれない。 「電車は八時台に二本。 九時台に一本。 そして、今から来るのが」 両足でホームを踏みしめ、拳を固く握り、男は少女を振り向いている。 少女は、正面の線路を見つめている。 電車はどんどん近づいてくる。
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