001.星

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減速してホームに滑り込んだ電車が、止まった。 人気のない車内。 両脇に吸い込まれて開いたドア。 「乗らないの?」 正面を見たまま、尋ねる少女。 男は、固く握っていた拳を開いた。 汗で手のひらに貼りついていた切符が、しばらくして落ちた。 ドアが閉まり、電車は動き出す。 振動が少しずつ遠ざかっていく。 男は脱力して、その場にヘナヘナと座り込んだ。 「死にそびれた…」 今日こそはと思っていたのに。 なるべく他人に迷惑のかからない場所を選んだつもりだったのに。 「バカね」 少女が言う。 「駅を通過する快速を選ぶべきだと思うわ。 そして、線路に下りて待っていればいいのよ。 どうせ怖くて、身動きなんて取れなくなる」 「ひどいじゃないか」 慰めてくれもしないで、そんな言い方。 少女は何も答えない。 男を見てさえいない。
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