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「説教、終わり?」
呆れて固まっている私の顔を覗き込むようにヨウがまた、距離を詰める。咄嗟に後ずさったが、背中がすぐに壁へと当たった。
視線を斜めに伏せながら、私は声を絞り出した。
「ええ、終わりです。
早く持ち場に戻りなさ…」
言い終わる前にヨウの長くごつごつとした指があっという間に私の顎を掬い、目を見開く私の唇を奪う。
突然のキスに戸惑い、ヨウの胸を押してみるが、びくともしない。それどころか、顎を押さえているのと反対の手で腰を抱き寄せ、さらに身体を密着させながら、私を壁へと押し付ける。元より、力で敵う相手ではない。私は抵抗するのを諦めて、目を閉じながら身を任せる。
私が力を抜いたのを見計らったかのように、唇に舌先の触れる感覚がする。随分、久しぶりな気がするその感覚に浸りながら、小さく口を開くと、無理やり割り込むようにして咥内にヨウの舌が侵入する。遠慮なく私の舌を絡めとり、そのまま擦り合わせるようにしながら、いやらしい水音が室内に響く。
「ん……はぁ………」
キスの合間から水から上がった魚のように必死に息を吸い込む。ヨウとのキスは、いつもいっぱいいっぱいで、息をする暇さえなくて、段々と酸欠ぎみになる。だからかもしれない、そのうち頭の中が真っ白になって、何も考えられなくなってしまう。
そして、ヨウのいいなりになってしまうのだ。
「なぁ…シねぇ?」
崩れ落ちそうになる膝を叱咤しながら、魔法にかかったように、コクン、とうなずく。先程まで怒っていたけれど、恋人の切羽詰まったような欲情の瞳を見れば断れるはずもない。
「場所は…変えて……」
震える声で訴える私を見て、ニヤリ、とヨウは笑う。
密着した私の太ももにヨウの硬いそれが当たっていた。
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