第1章

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私と料理長は、いわゆる、恋人と言うやつだ。 色々あって(詳しくは本編参照)、こうして今に至るわけだが、この狭い船内、しかも海賊の集まりのわけだから、したい放題にヤるのは、副船長として許可できず、私はヨウとの性交渉を制限していた。 この前、最後にしたのは、確か2週間前だ。大きな仕事が重なったこともあり、船長について回っているうちに気付いたら2週間がたっていた。 私はこう見えても、19歳の健全な男性である。正直、ヤりたい盛りの年頃である。 しかし、「若すぎる副船長」というだけで、年上ばかりの部下からは厳しく見られることもある。ずいぶん認められてきたとは思うが、それでも海賊、荒くれものの集まりとなれば、いつ隙を突かれて寝首をかかれてもおかしくはない。 だからこそ、私は自分を戒めるためにも、怠惰な性生活、略して性活は自制に自制を重ねている。 何より、本当は、…ヨウに溺れそうで怖い。 後戻りできないほど溺れて、捨てられたときのことを考えると、怖くて怖くてたまらない。あの万年常春頭の色男のこと、ほんの気紛れで私を面白がって手を出してはいるが、いつかはきっと、飽きられてしまう。 今の彼の愛情を疑うわけではない、でも、もしこの航海の目的を果たしたとき、船から降りたなら、そこにはたくさんの女性がいる。彼だって今は遊んでいるが、いつかは所帯を持って幸せに暮らすのだろう。いや、そうでなければならない。美しい奥方と可愛い子供たちに囲まれて暮らす資格が彼にはあるのだから。意地っ張りで素直でなく、こんな冴えない男といつまでも一緒にいたいとは誰も思わないだろうし、私だったら熨斗をつけられたってお断りだ。 だから、私は溺れてはいけない。 いつでもすぐに、身が引けるように…。
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