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ベッドのスプリングは、軋む。幾度か軋んだ後、男の方が絡まっていた腕やシーツから脱出する。
気怠気(げ)に、疲労困憊な身体を無理矢理動かす。脱ぎ捨てた衣類から、自分のだけを探す。
ワイシャツ、ベルト、ズボン、下着類、片腕に抱えて、シャワー室がある扉に向かう。フローリングの床を、ペタペタと足音を立て扉を開けて。
次第に、シャワー室からシャワーの音が聞こえ出した頃、ベッドには未だ人影が。残されたシーツを手繰り寄せて、胸元迄巻いた後ベッドの上でシャワー室の方向ではなく、ベッドの脇の机に置かれた携帯電話。
着信を知らせるランプが、点滅している。相手は、シャワー室にいる男には知らせる気は全くない。点滅が消える。タイミング良く開いた扉から、慌てて着替えたのかワイシャツやベルトが着崩れていた。
男は、ベッドの脇の机に置かれた携帯電話を持ち、ソファーに放り投げていた鞄に入れる。落ちていたシステム手帳も、ピンのついたネクタイも、腕時計も、鞄に入れていく。
ベッドのスプリングは、軋む。枕元に寄り掛かるように座った男は、相手の髪を一撫でする。
「ごめんな?仕事行かないといけなくなったんだ。連絡は、こちらからするから。悲しそうな顔するなよ、な?」
そう言って、男は鞄を持ってドアの方へ向かう。
途中に脱ぎ捨ててあった靴下も、鞄に入れて。一度も後ろを振り向かずに、素足で革靴を履いてドアを開ける。一度も後ろを振り向かずに、片手を上げて手を振った後にドアから出て行った。
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