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「ひぃっ!?いや!」
なんとなく、首を絞めてみる。ぎりぎりと、徐々に、力を込めて。宮市 叶絵はなんとか抵抗しようと縄を解いてみようとしたり、身体を捻ってなんとか僕の手から逃れようとするけど、無駄だよねぇ。
鍛えてない女が男の腕力に敵う訳ないのに。
頃合いを見計らって手を離してみる。咳をしながらぜぇぜえと荒い息を繰り返す。
まるで水から出されて酸素を求める魚みたいだ。
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!!」
「何に対して謝ってるのさ?僕に謝ってんの?僕に謝ったってなーんにもなりゃしないよ?あ、そうだ。じゃあさ、僕に告解してみてよ。そしたら気が変わるかもよ?」
笑顔でそう言う。気が変わることなんてある訳ないのにね。僕の嘘吐き。
「わ、私…私のお腹にいるの不倫相手の子なの!ごめんなさい!ゆ、許してお願い!」
「旦那にはなんて言うの?そもそも言うの?隠すの?」
「い、言う!言うから!この子はちゃんと育てるからぁ!」
子供みたいに泣きじゃくりながら必死に命乞いをしてきて、本当笑える。ちゃんと育てるからって、ばっかじゃないの。不倫の果てに出来た子の末路なんて、たかが知れてる。
両手で顔を覆う。この親に感情は?動いてる訳がない。腹の子に同情は?この僕が?感じてる訳がない。
本当、馬鹿ばっかだ。
「…………っえ?あっ…いた……?いやあああぁぁぁあぁぁああっ!」
腹に突き刺さったナイフを、何が起きたか分からずに呆然と見つめていた宮市 叶絵。激痛でやっと現状を把握出来たのか、腹の子を心配する素振りを見せる。
何を今更。僕が首を絞めただけで心が折れて。一時的に腹の子を拠り所にしてるだけのくせに。愛情なんてないんだろう?
「言ったじゃん。殺すって」
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