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どっちが好みと聴かれて、ぽかんとしたまま僕を見る。
「え……?何?何かの質の悪い冗談?」
不安そうに無理に笑顔を作って、僕を見つめる。にっこり笑い、サバイバルナイフを指に押し当ててほんの少しだけ切る。傷から溢れて玉の形になった血を垂らして見せて、
「残念、本物。これで身体を刺したらどうなるでしょう?」
「ひぃっ…!?何?なんなのよ!?やだ、放せよ!」
パニックに陥って喚きながら暴れ始める。そりゃそうだよね。殺されると分かって、パニックにならない人間の方がこの場合おかしい。
それにしても、何も出来ずに喚き散らす人間の姿は本当に無様で滑稽だね。でも、僕が欲しいのはそれじゃない。
「うるさいな。黙らないと耳を削ぐよ?」
女の目の前にナイフを突き立てて脅す。まぁ、それより酷い事しちゃうんだけどね。
脅しが効いたのか、泣きつつも大人しくなる。
「ねぇ、人間が一番美しくなる瞬間っていつだと思う?」
突然の質問にきょとんとする。なんとか僕の機嫌を損ねないように必死で言葉を紡ぐ。
「え、えっと、生まれた瞬間…?それとも……えっと……生きてる時?」
「あはは、生きてる時ね。確かに美しく生きてる人間もいるのは確かだけど、君はどうなの?美しく生きてきたと言える?少なくとも僕は、人生も生き方も醜いよ。だってそうでしょ?平気で、それどころか、楽しむ為に人を殺すんだから!」
ナイフを左腕に力任せに突き刺す。ぞぶっ、と刃が肉を突き破る感触。
「あ"あ"あ"ああああああああああああああ!!」
ぐりぐりと突き刺したまま動かして、引き抜く。真っ赤な血を滴らせるナイフに、舌を這わせた。
「は、はは、はははは、あはははははははははははは!それだよ!人は死にゆく時が一番美しい!どんな人間だろうと、死にゆく瞬間は無様で美しいんだ。生きてる時はどんなに不平等でも、死と痛みと恐怖は平等なんだよ。死だけは恐ろしく平等だ。どうしようもないクズだろうが、どんなに素晴らしい人間だろうが、死の前では無力なんだよ。だからさぁ、無様に泣き叫んで悲鳴を聴かせてよ?優しく甚振ってあげるから、僕を楽しませてね?」
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