四月十六日 宮市 叶絵

4/6
前へ
/6ページ
次へ
「や……いや……死にたくない、助けて…お願い。誰にも言わないから、だから、助けて…ください」 泣きじゃくりながら助けてと懇願する。本当、無様な姿だ。無様に生にしがみつこうとして、それを踏みにじるのがどれだけ気持ちいいか。 「みーんな必ずそう言うんだよね。警察にも言わないから助けてって。そんなの信じると思う?君は僕の声を聴いて、僕の顔を見たんだ。例え逃したとしても、いつ殺されるか分からない恐怖で警察に行くだろうし。そもそも殺す事が目的なんだから、君を見逃すメリットなんて、僕にはひとっつもないんだよね。と、言う訳だからさ、僕を楽しませてよ。まぁ、君は苦痛と絶望しか味わわないけど」 首筋にナイフを這わせてみる。見るからに震えて、そんなに震えたらその震えで皮膚傷つけちゃうかもよ? 「ねぇ、君は幸せ?」 「し、幸せな訳ないでしょ!こんな目に合わされて!」 「そんな事を聴いてるんじゃないよ。今までの人生、幸せだった?結婚して子供も出来て、幸せ?」 笑顔で聴く。まぁ基本笑顔でいるんだけどね。 「……………」 「答えないのは得策じゃないと思うよ?今僕の機嫌損ねちゃったら、いらない苦痛を味わう事になると思わない?」 首筋のナイフに少し力を入れる。それだけで反抗的な光は見えなくなった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加