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「ふーん・・・こら!また泣く!男は泣くなって言われて育ってないのかよ!」
「うん、ごめん。随分、母に甘やかされていたからね」
「まったくもう、ほら」
短パンのポケットからくしゃくしゃのハンカチが出てきた。そして、それをぽいっと投げる。
「優しいね。女の子にもてるでしょ」
「オヤジと違ってチビだからな。モテないよ」
こういうのはツンデレっていうんだよな。
虎太郎は、ただただ僕に優しかったけれど・・・桂斗くんはツッパっているようで優しくしてくれる。
ふと権藤さんの言葉が甦る。
小学生の時も、中学生の時も、虎太郎は自分への思いを何回も諦めようとした。
彼の悲しい気持ちを思うと胸がギュッと掴まれる思いがする。
僕は何も知らずに虎太郎を頼ってばかりで、くっついていた。
それがどんなに彼を苦しませていたことか。
「こら!雪兎。泣くなよ。男なんだから泣くな!」
「だって虎太郎がかわいそうで・・・僕が情けないばっかりに・・・」
「オヤジはお前に一途だったんだな。愛美の入る隙はなかったってことかな」
「その頃、僕はまだ子供で・・・虎太郎の気持ちに気づいてなかったから・・・愛美さんにいろいろ慰めてもらったり、アドバイスもらったりしてたらしい」
「あの女、ロリコンだからな」
「お母さんの事、そんな風に言わない!」
「俺はだいたい嫌なことばっか見せられてきたから・・・アイツ隠さないからさ。俺のために身売りしたりして・・・だから一緒にいちゃいけないって思った」
「桂斗くんも大人だね・・・かわいそうに」
「べっ・・・別に・・・///」
思わず抱きしめていた・・・子供のころの虎太郎がここにいるみたいな気がして。
「おっ、おい、雪兎、離せ!」
「僕は何もできないけど、桂斗くんのことは好きだよ」
桂斗は一瞬で真っ赤になった。本当にかわいい。
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