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すっと岸さんが前へ一歩出て、距離を詰めた。
岸「身だしなみには、気をつけて欲しいな」
岡野「は、はい。清潔感だけは気をつけます」
岸「それは、基本中の基本だ」
岡野「すみません」
岸「だが、そこにさえ気をつけてれば、まあ合格だろうな。お前の場合は、その捨てられた犬のような目が売りだ」
岡野(捨てられた犬!?)
葛原「わー、また岸さんが新人をいびってる」
横を通り過ぎる葛原さんが、気の毒そうな目を向けた。
葛原さんも同僚で、かなりオシャレなスーツを着こなす人だ。
ハイカットの靴や、着崩してるようでも自分の個性を映えさせるセンスは真似できない。
岡野(でも葛原さんの視線、少しおもしろがってるような)
岸「失礼だぞ、葛原。私は指導しているだけだ」
そっちにそう言った後、僕をじっと見つめてくる。
岸「びしばし鍛えるから、そのつもりで……」
岡野「はい。よろしくお願いいたします」
岸「それじゃあ、まずは……」
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