第1話

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窓の外はとっぷりと日が暮れてしまい、高層ビル群の夜景がきれいだ。 岡野(初日から、めちゃくちゃ残業だー。これもそれも、あの人が大量のデータ整理を持ってくるから……。全然クリエイティブな仕事でもないし……) 「全然終わらないよー。鬼だ、あの人……」 岸「こら、誰が鬼だ」 いないと思っていた岸さんがいつのまにか戻ってきていて、僕の頭を書類の束で軽く叩く。 岡野「す、すみません。その、鬼だなんて」 (気配を消すのがうますぎっ!!) あわてて首を激しく振る。 岸「どうだ?進んだか?」 岡野「えっと……」 岸「まだ、ここまでしか終わってないのか?」 岡野「すみません。もっと急ぎます」 (冷や汗が出る?っ!!) 岸「が、丁寧にやってるのは、いいな」 岡野(え……っ、ほめられた?) 一瞬、きょとんとしてしまう。 岸「だが、手を抜くことも覚えろ。バカ正直に、ひとつひとつじゃ日が暮れる。実際、暮れてるな」 冷淡に言われて、肩をすぼめる。 岡野「……すみません」 岸「いいか?このグループとこのグループは別くくりでいいんだ。この列だけを見て」 岡野「あ、そっか」 するするとデータを分けていく手際に、僕はすっかり見惚れてしまう。 岡野(それに……顔が近いと、きれいさが目立って……。しかも、なんかいい匂いがするよ。スパイシーウッディーかな?でも、もっと甘いかも……) 思わず息を大きく吸いこんでしまいそうだ。 すっと鼻筋が通っているから、横から見るとよけいに美貌が際立つ。 形のいい、ちょっとつんとしたくちびるが動くたびに凝視してしまう。 岡野(男の……人……だよね。なんか、きらびやかな感じだよな……) 岸「おい、聞いてるのか?」 いきなりぱっとこっちを向かれて、どきっとした。 整った貌が、急に視界いっぱいに広がったのだ。 岡野(誰だって、ドキドキ……するよね) 「聞いてます」 岸「じゃあ、後はできるな。ひとりで」 岡野「えっ」 (やっぱり、鬼……かも……?)
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