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岸「さっきから、お前、見過ぎ。そして、照れ過ぎ」
ぼそっと言われ、どきっとなった。
岡野「す、すみません。濡れた岸さんも、きれいだなって、っわっと」
(なにを正直に言っちゃってるんだ)
言いかける僕のおでこを、岸さんがピンと弾く。
岸「おかしなやつだな」
岡野「…………」
(上司に濡れてきれいだなんて、消えてしまいたい)
恥じいりながらも、とにかく紅茶をすすった。
岸さんも、どこかはにかんだような顔で、こっちには視線をくれないまま……。
岸「…………」
甘いような、熱っぽいような時間が過ぎていく。
と、足元を何かふさっとしたものが通り抜けた。
岡野「へ?」
見れば、黒猫が甘えるように顔をあげる。
にゃあ。
岡野(猫?あ、足先だけが白いっ。これって、お兄ちゃんちで飼ってた黒猫と同じ……お兄ちゃんは、ソックスって猫を呼んでて……僕にもなついてて)
岸「ソックス、お客様だ。おとなしくしろ」
岡野「ソックス!?」
(もう、間違いないよね)
「岸さんは……お兄ちゃん?」
僕の問いかけに、岸さんのカップを持つ手が止まったーー!!
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