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第8話
社長室で喜多嶋社長は僕と岸さんを前に、大きく笑んだ。
喜多嶋「まったく、おもしろいな、お前たちふたりは」
岸「喜多嶋社長は、結構悪趣味ですね」
喜多嶋「別に、悪くはないだろ?俺は、いつも鉄仮面の岸がうろたえる姿が見たいだけだからな」
岸「それが、悪趣味だと言うんです。そんなことに、うちの岡野を巻きこまないでください」
喜多嶋「うちの……か……確か、岡野は俺の会社の社員だったと思うが……」
岸「私の部下です。それも、あなたが決めた」
岡野(わー、とうとう、社長とも言ってないよ。このまま険悪になったらどうしよう)
僕の心臓はばくばくしていた。
喜多嶋「そんなに大事なら、しっかりとつかまえておかないとな」
喜多嶋社長が、ふっと肩から力を抜いて言う。
岸「どういう意味ですか?」
喜多嶋「そのままの意味だ。おっと、もう時間だな。そろそろ、鷲見のところのカバン持ちが迎えに来る。じゃあな」
大股で、喜多嶋社長は社長室を出ていく。
それを見送るまでも、ずっと岸さんは僕の肩をつかんでいた。
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