第8話

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僕の名前を呼ぶなつかしい声が蘇ってくる。 岡野「あぁ……やっぱり、お兄ちゃんだ。そう呼んでくれてたから。ヒロって……」 岸「お前は、お兄ちゃんお兄ちゃんばっかりで、名前を覚えるのを怠ったな」 岡野「ごめんなさい」 岸「顔まで忘れられているのは、結構ショックだったぞ。こっちは、これでもお前のことを特別に思ってたんだ」 岡野「特別に!?」 嬉しさで、声のトーンがあがった。 岸「そうだ。面接のときのエピソードに使うくらいには、特別だ……」 少しはにかみながらも告白してくれる。 岡野(じゃあ、恥ずかしくない人間になりたいって言った相手って……まさか、まさか、僕自身だったの!?) 「お兄ちゃん……」 岸「その呼び方は、やめてくれ。本当はまだ明かしたくなかった」 岡野「だから、どうして?」 岸「再会するときには、もっと立派な人間になっているつもりだったんだ。まさか、こんなに不意に会ってしまうとは思ってなかった」 気まずそうに横を向かれる。 岡野「僕に、会いたくなかった?」 岸「そうじゃない。どうでもいい人間なら、ここまで思いつめたりしない」 岸さんが、僕の腕をつかむ。 岡野「っ」 岸「ヒロは、まるでヒヨコだな。小さいころからそうだった。いつも、私のあとを追いかけてきてばかりいて……」 ◆ 岸「ヒロ、ゆっくりでいいから」 岡野「お兄ちゃん、待って、待ってよ~」 岸「ちゃんと待ってるよ」 岡野「置いていかないで~」
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