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岡野「ごめん。邪魔だったよね。それに、そのせいで、お兄ちゃんは僕をかばってケガをすることになったし……」
目を伏せる。
岸「あれは事故だ。気にするな」
岡野「でも、傷跡まで残って」
岸「あの傷は、私にとっては勲章だ。大事な人間を守れた証だからな」
岡野「僕は……もう、お兄ちゃんのどこにも傷をつけたくない。まして、僕のためになんて」
岸「私は……たぶん、また同じことをする」
岡野「お兄ちゃん……」
岸「それから、かわいいお前を、邪魔なんて思ったことはない」
岡野「本当に?」
岸「ああ、わかっていたから……」
岡野「?」
岸「お前が、置いていかれるのを必死に嫌がる理由を……わかっていた」
岡野(あっ……)
「父さんと母さんに置いていかれたからだよ。ふたりだけで、死んじゃった……だから、もうひとりで置いていかれるのが嫌だった……」
(……平然と言おうとしたけれど、やっぱり声が震えてしまう……)
岸「ヒロ……」
岡野「うっ……」
ぐすっと鼻をすすってしまった。
岡野「ごめん。なんかお兄ちゃんの前だと、昔に戻っちゃうみたいで……。もっと男らしくなった自分を見せたかったのに……まるで子供のままだよね」
岸「気にしなくていい……」
必死に涙をおさえる僕の頭を、岸さんが優しく撫でてくれた。
やわらかいまなざしを感じる。
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