第8話

6/8
110人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
岡野「ごめん。邪魔だったよね。それに、そのせいで、お兄ちゃんは僕をかばってケガをすることになったし……」 目を伏せる。 岸「あれは事故だ。気にするな」 岡野「でも、傷跡まで残って」 岸「あの傷は、私にとっては勲章だ。大事な人間を守れた証だからな」 岡野「僕は……もう、お兄ちゃんのどこにも傷をつけたくない。まして、僕のためになんて」 岸「私は……たぶん、また同じことをする」 岡野「お兄ちゃん……」 岸「それから、かわいいお前を、邪魔なんて思ったことはない」 岡野「本当に?」 岸「ああ、わかっていたから……」 岡野「?」 岸「お前が、置いていかれるのを必死に嫌がる理由を……わかっていた」 岡野(あっ……) 「父さんと母さんに置いていかれたからだよ。ふたりだけで、死んじゃった……だから、もうひとりで置いていかれるのが嫌だった……」 (……平然と言おうとしたけれど、やっぱり声が震えてしまう……) 岸「ヒロ……」 岡野「うっ……」 ぐすっと鼻をすすってしまった。 岡野「ごめん。なんかお兄ちゃんの前だと、昔に戻っちゃうみたいで……。もっと男らしくなった自分を見せたかったのに……まるで子供のままだよね」 岸「気にしなくていい……」 必死に涙をおさえる僕の頭を、岸さんが優しく撫でてくれた。 やわらかいまなざしを感じる。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!