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岡野(ああ、やっぱり、この手は、お兄ちゃんの手だ……同じ……優しくてあたたかい手……)
岸「本当に変わらないな。ヒロは昔から頭をなでてやると、そうやってとろけるような目をしてた」
岡野「えっ」
(そうなんだ……)
岸「あのころから小さなお前が……ひたすら私だけを慕ってくるお前がかわいくて仕方なかった」
岡野「……嬉しいな……」
(嫌われてない……それだけが、こんなにも嬉しい……)
岸「でもあれは、両親を一度に失ってさびしかったお前が、ただそばにいた私に甘えていただけだと思った」
岡野「えっ……」
思わぬ話の展開に、目を丸くした。
岸「だから、ヒロと離れた後、今度会うときは、ちゃんと自分を尊敬してもらって、本当の私を好きになってもらおうとして……」
言いながら、少し複雑そうな顔をされる。
岡野「尊敬してます。もう、十分に岸さんは、立派です」
僕はまばたきしながら、岸さんを見つめた。
岸「どうかな?まだ喜多嶋社長のようには、いかない」
岡野「っ!!」
急に声が事務的になった。つかまれた腕も一度離される。
胸が痛い。
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