第8話

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岡野(ああ、やっぱり、この手は、お兄ちゃんの手だ……同じ……優しくてあたたかい手……) 岸「本当に変わらないな。ヒロは昔から頭をなでてやると、そうやってとろけるような目をしてた」 岡野「えっ」 (そうなんだ……) 岸「あのころから小さなお前が……ひたすら私だけを慕ってくるお前がかわいくて仕方なかった」 岡野「……嬉しいな……」 (嫌われてない……それだけが、こんなにも嬉しい……) 岸「でもあれは、両親を一度に失ってさびしかったお前が、ただそばにいた私に甘えていただけだと思った」 岡野「えっ……」 思わぬ話の展開に、目を丸くした。 岸「だから、ヒロと離れた後、今度会うときは、ちゃんと自分を尊敬してもらって、本当の私を好きになってもらおうとして……」 言いながら、少し複雑そうな顔をされる。 岡野「尊敬してます。もう、十分に岸さんは、立派です」 僕はまばたきしながら、岸さんを見つめた。 岸「どうかな?まだ喜多嶋社長のようには、いかない」 岡野「っ!!」 急に声が事務的になった。つかまれた腕も一度離される。 胸が痛い。
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