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エピローグ
僕と直哉さんがニューヨークへ来て、数ヵ月が経った。
今日は取引先でもあり友達のエルスに赤ちゃんが生まれたので、お祝いを持っていく。
エルスの家はアパートの一室。カントリー調で木をふんだんに使ったあたたかみのある部屋だ。
それはエルスの人柄も現わしている。
岡野「うわ、手がちっちゃあい」
僕は、恐る恐る赤ちゃんを抱っこしながら言った。
エルス「まあ、ベイビーが笑ってるわ。きっとヒロのことが気に入ったのね」
岡野「そうかな?」
僕は隣にいる直哉さんを見上げた。
岸「そうなんじゃないのか? とりあえず、私が抱こうとしたら泣いた」
ちょっと憮然とした顔をする。
岡野「それは、きっと直哉さんが真剣すぎる顔をするからだよ」
岸「人様の赤ん坊を抱っこするんだ。真剣にならざるをえない」
岡野「ふふっ。そこが直哉さんらしいんだけどね」
そう言うと、直哉さんの頬がゆるんだ。
岸「私の分も、抱っこしてやってくれ」
岡野「わかった。僕、結構あやし上手なんだよ」
そう言って、僕は赤ん坊の顔を覗きこむと、唇をぶるるるっと震わせた。
赤ん坊は、それをキャッキャと喜ぶ。
エルス「あら、ホント。ヒロは、あやし上手ね。きっといいパパになるわ」
岡野「そ、そうかな?」
パパと言う言葉に、ちらっと直哉さんを盗み見た。
岸「…………」
どこが変わったというわけじゃないけど、表情が固い気がする。
岡野(直哉さん……?)
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