第1章

3/10
前へ
/115ページ
次へ
~悲しい過去~ ……カタン。 ……一輪挿しにした、向日葵の花が静かに… ゆっくりと…誰の目にも触れる事無くし、哀しげに倒れた…。 誰にも…サヨナラを言わずに。 夏が来る度に、あの日の事が今現在のように蘇り、私の心を締めつける。 5年前の夏の暑い日の悪夢…。 夫は私ではない人と、もう二度と会えない世界へと旅立った…。 ------ ------------------ 6年前の夏。 私、相川 紗良は23歳の時に、7つ年上の愛する人、高藤 陸と結婚した。 「陸、本当に私で良いの?」 「僕は、紗良じゃなきゃダメなんだ。君の母性みたいな…いや、柔らかい心…ん?…違う…。」 照れた顔で私をチラリと見る陸。 「ふっ…。ありがとう。私も陸の事が大好きだよ。幸せになろうね。」 嬉しくて涙が溢れた。 あれが最後の涙になるなんて…。
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加