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「はあ……はあっ……っ」
それは、なんて不思議な光景だったことか。
「こんの、待ちやがれ!寿茉莉華(ことぶきまりか)!!」
少女は、暴言を吐きながら猛然と俺の前を走っていった。
誰もが唖然とする中、いち早く我に返ったのは隣を歩く教頭先生だった。
「またお前かっ!東雲出雲!!!」
またって、これはいつものことなのか?
そのことに対しても、驚いてしまう。
それで、思わず振り返って蘭次に訊ねた。
「出雲は何を追いかけていったんだ?」
蘭次は楽しげに目を細めて、遠ざかる出雲の背中を見つめている。
拝み屋という職業のためか、蘭次には人には見えないものが見えるらしい。
「彼女が追っているのは生き霊ですよ」
生き霊ねえ。本当に死んでもいないのに、人間の体から魂が抜けることなんてあるんだろうか。
蘭次といると、不可解な現象に遭うことはしばしばあった。
しかし、本物を拝んだことはないから、今一つ信じられないと思っている自分がいる。
「で、教頭先生行っちゃいましたけど、どうします?」
蘭次は微笑んでからもうすでに見えなくなった出雲と教頭先生を指さした。
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