5人が本棚に入れています
本棚に追加
「キャアアーッ!」
耳をつんざく悲鳴は何事かと駆けつけてきた生徒のものだった。
近い教室の生徒達が、その奇妙な光景に騒ぎ出す。
「警察だ!生徒は教室に戻れ!」
俺はそう叫びながら、とにかく安否を確かめようと階段を降りた。
「大丈夫か!?」
救急車と警察には蘭次が電話してくれている。
改めてよく見るとやはりキレイに腕は壁に埋まっていた。
亀裂や破壊した後など、一切ない。
「こりゃ、人間の出来る芸当じゃねえな」
だからと言って幽霊がやったとまでは思わないが。
「あ~、これは酷いな。中でグチャグチャになってないといいけど」
「やめろよ。そんなの想像したくねえ……って、誰だ!?」
振り返ると、いつの間に近づいたのか東雲出雲が真剣な顔で見つめていた。
「こんちわ。刑事さん……だっけ?」
愛想笑いを浮かべて、挨拶する。
「ガキの見るもんじゃねえ。あっち行ってな」
まったく気配を感じなかったことに動揺しつつも、この悲惨な状況をまだ成長途中の少女に見せ続けるわけにはいかない。
「私、子供じゃないよ」
「俺から見りゃ高校生なんてガキだ!」
俺は出雲の背中を押して、ハタと気づいた。
戻れと言ったはずの生徒達が、誰一人として戻っていない。
それどころか、スマホを取り出し撮影する者までいる。
なんだこれは。例え友達じゃないとしても、同じ学校に通う仲間だろう。どうして平然とそんなことが出来るんだ。
吐き気がする。
「あーらら、先生達も戻そうとしてるんだろうけど、うちの生徒基本的に聞かないから」
出雲は余裕の笑みで、それを見上げた。
「私がどーにかしてあげようか?」
最初のコメントを投稿しよう!