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「……どういう意味だ?」
先生でさえも言うことを聞かせられない生徒達が、こんな少女の言うことを聞くわけがない。
しかも集まっているのはほとんどが3年生だ。
出雲は一年生だから、普通に考えて無理だろう。
しかし、その自信に満ち溢れた顔はなんとなく信用出来そうだと思わせる。
「私が全員を教室に戻してあげる。ついでにスマホのデータも消す。他言しないように言ってもいい。その代わり、私がここに残ることを許す」
「……取引ってことか?」
「私、結構役に立つと思うけどな♪」
本来ならば、こんな取引聞くまでもない。
しかし、この状況は少し厄介だ。
こんな場面がネットにでも流れれば、被害者が傷つくことになる。
それに、あまり情報が漏れるのは好ましくない。
俺は仕方なく頷いた。
「取引成立。──みんなー!教室戻って!後、スマホのデータ消して。それにこのことは秘密だから!」
出雲が大声で叫んだ。
そんな普通にお願いするくらいじゃ、人は動かない。
そんなことも分からないのか。
俺は、少し後悔しながら生徒を戻そうと階段を上りだした。
しかし驚いたことに、
「え、マジで?オレ、写メちゃった」
「ばーか、消せよ。出雲が言ってんだから」
「ちょっと、押さないでよー」
「出雲ぉ、今度遊び行こー」
唖然とした。
生徒達は自らデータを消し、教室に戻っていく。
一体何が起こってるんだ?
「おー、行こ行こ!あ、先輩の奢りね!」
にこにこと笑っている出雲は、手を振って見送った。
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