プロローグ

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「──……っ!」 その日、見た光景はきっと一生かかっても、忘れることは出来ないと思う。 それほどまでに横たわる兄の姿は痛ましく、衝撃だった。 「……ジンッユーリを連れて、逃げろ!早く!」 震える双子の兄、迅は長兄を見つめて私の腕を掴んだ。 「な、何するの!?迅!助けないと!」 私を引きずるように歩き出した迅は、長兄をもう振り返ることはなかった。 「いや!離して!このままじゃ、死んじゃう!みんな……みんな、死んじゃうよぉ」 「ユーリ、ごめんな。最後まで守ってやれなくて。兄ちゃんを許してくれ。──兄ちゃんが必ず逃がしてやるからな」 もう動けるはずもないのに、まるで譫言のように呟いていた。 「……ぃや…いやぁああ!!!」 その日、兄は消えた。 初めからそこにいなかったみたいに。
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