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「不知火先輩。ここはあなたの部署ではないので、お戻りください。仕事の邪魔です」
物がごった返した部屋はお世辞にも広いとは言えない。
男ばかりなためか、汗臭いし心無しか暑い気がする。
しかし、その言葉が聞こえた瞬間寒さで固まってしまった。
知的そうな若い女性。髪を後ろで一つにまとめ、今時珍しいくらい真面目そうな女性だ。
日野まもり(ひのまもり)25歳。
真面目過ぎるため、少し空気が読めないのが難点の美人だ。
「そう堅いこと言うなよ。まもりちゃん」
そう言うと、まもりはあからさまに嫌そうな顔をした。
「馴れ馴れしく呼ばないでください。ここは仕事場です」
「仕事場じゃなければいいのか?」
「なっ……!」
俺はニヤニヤと笑って後輩を離した。
「まあそう怒るなよ。ちょっと遊んでただけだろ?」
ポンッとちょうど良い高さにある頭を叩く。
パッと身を翻したまもりは微かに顔を赤らめて、眉間に皺を寄せた。
「仕事中に遊ばないでください!」
「これくらい許せよ。俺もこれから仕事なんだ」
「なら早く行ってください!迷惑です!」
「お?押すなよー」
グイグイと背中を両手で押すまもりは、俺を部屋から追い出すと怒った顔のまま扉を閉めた。
その向こうで呆然とする後輩達が俺を見つめていた。
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