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薄暗いトンネルを進んで、ちょうど中間くらいの場所に少女は座っていた。
シミだらけの汚れた壁に背を預け、ぼんやりと天井を見つめている。
配布された写真でもそうだが、とても15歳の少女とは思えない落ち着きようだ。
短い髪は、染めているのか白銀で、双眸は漆黒の闇より深い黒。
それが肌の白さによく映える。
いわゆる“美少女”というやつだ。
「こんなとこで、何してるんだ?」
俺は懐中電灯で照らした少女に問いかけた。
「……」
答えない。
まるで、俺の言葉なんか耳に入らないみたいだ。
その横顔は、なんだか死人のようであまり気持ちの良い感じはしない。
「どうした?どっか、怪我でもしてるのか?」
俺は少女の隣に膝をついた。
そうして、顔をのぞき込むとヒヤリと首筋が冷えた。
まったくの無。
何も感じず、何も聞こえず、ただ天井を穴が空くほど見つめる。
しかし、その目は何も写してはいない。
「東雲出雲だな?今、救急車を呼んでやるから、しっかりしろ」
何か酷く恐ろしい目にでも遭ったのだろう。
ここまで酷いのは見たことないが、職業柄精神を壊すほどの恐怖を味わった人を何人も見ている。
発狂していたり、口が聞けなくなっていたり。人間不信になって、自ら命を絶つ人もいた。
普通の刑事とは比べものにならないほど、危ない橋も渡ってきた自信がある。
俺は、ケータイを取り出すと少女に背中を向けて立った。
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