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ケータイを耳に当てた俺は、背後に何者かの気配を感じて振り返った。
心臓が跳ねる。
怖いもの知らずと言われた俺が、冷や汗を掻いている。
緊張して、手足が硬直しそうになった。
だが、よくよく見てみるとそこなには誰の姿もない。
ただ、少女が座っているだけだ。
まったく動いた感じはしない。
だが、確かに誰かいた。
それは勘違いとかそういうレベルではない。
確かにそこにいて、俺を見ていたのだ。
殺気を込めた目で。
俺は、再びケータイを耳に当てた。
相手は俺の古い知人。
「……俺だ。今すぐ車から降りて、こっちに来い。たぶん、これはお前の力がいるだろ」
トンネルの前に停めた車に乗るそいつは、電話の向こうで嫌そうな声を出し、俺が怒鳴る前に電話を切った。
これは俺の専門じゃねえ。
俺は、生きた人間専門だ。
確実にこの中にいる、それの気配を探りながら俺は少女の隣に座った。
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