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「この子が東雲出雲ちゃん?」
長い髪を一つにまとめた優男。左目は眼帯で隠している。
この妙に和服の似合う大学生は黒崎蘭次(くろさきらんじ)
代々続く拝み屋の6代目当主である。
「それで、霊というのはどこです?」
蘭次はキョロキョロと見回して、首を傾げた。
「霊なんかいないよ」
答えたのは東雲出雲である。
「いたのは、生き霊。……ああ、これも霊の仲間か」
一人納得した様子で頷く。
「で、あんた誰」
東雲出雲は、蘭次を見上げて顔をしかめた。
「拝み屋って言えば分かりますか」
拝み屋──古来より、霊や妖怪などを倒すことを生業とした人のことである。
小さく頷いて、東雲出雲は俺を見る。
「俺は、刑事だ」
なんで刑事と拝み屋なんてものが一緒に行動しているのか。
いつも訊ねられる質問を、東雲出雲は聞かなかった。
「あなたは?」
蘭次は東雲出雲に分かり切った質問をする。
「おいおい、こいつは行方不明の女子高生だろーが」
車の中で散々説明しただろ。
しかし、蘭次は東雲出雲から目を離さない。
「……私は」
東雲出雲は答えようとして、何かに驚いたように振り返った。
「私、戻らなきゃだから行くわ」
「はあ!?ちょっと待て!お前には捜索願いが出てる!今すぐ帰るぞ」
俺は、走り出そうとする東雲出雲の腕を掴んだ。
「……っ!離せよ、おっさん!」
「お、おっさんだと!?俺は、まだ31だぞ!?」
「ぶふっ」蘭次が吹き出した。
「笑うんじゃねえ!」
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